|
銭亀の甲羅は1年で500円玉から2000円玉くらいの大きさに成長する。
いえ、4倍くらいになり、水替え時に邪魔になるのでその間、バケツに入れておく。
初夏に我が家の一員になった銭亀は、その年の冬は水槽が自宅という感じで暢気に暮らしていたが、翌年の夏あたりから水槽に入っていると、うるさくてしょうがない。
この頃には、水がきれいになる”ばくはん石”の上に立ち上がり、いつも水槽から逃げ出そうと伸び上がっている。
カチャカチャガチャガチャと水槽の壁によじ登ろうとするし、仰向けにひっくり返って、バチャン!カシャン。
誰か人が近づくと寄ってきて恨めしそうなちっこい眼で見ては、ガラスに手をかけて立ち上がる。
水槽から離れた途端、カチャカチャガチャガチャバチャン!
年がら年中これをやっている。
ついに水槽からおさらばする時が来た。
水替え時は逃げ出すチャンス!とばかり、必死だ。
水替えは毎晩していた。
銭亀は食事もトイレも、常駐している水槽天国の中で行うので、1日で水が茶色くなるし、臭いもしてくる。
30センチ×20センチの小型水槽に、深さ5〜7センチの水しかないので、水替えといっても15分くらいで終わる。
最初の頃は、銭亀を水槽に入れたまま、ペットボトルをカットして作ったひしゃくで水を汲み出しては、温水を足し、中の敷き石を手で引っかき回して汚れた水をまたくみ出すという方法でやっていた。
銭亀の住んでいる水槽の水は、通年25度前後に保っておくので、入れ替える水の温度も同程度の水温にしてやらなければならない。
2リットルのペットボトルに入れた水で3回ほど繰り返すと、ほぼ透明になる。
1年を過ぎる頃になると、エサの量も増えるので、その分汚れと臭いが気になる。
休みの日には、大掃除をする。
水槽の中にあるばくはん石や水草をバケツに取り出す。
銭亀は別のバケツの中に入れ、水槽ごと水道のある流しに抱えて持って行き、水を流しながら洗っていた。
その間、バケツの中で立ち上がってはゴロン、また伸び上がってはゴロンと疲れも見せずやっている。
つかみ上げて暖かい水槽に戻す時は、水槽に戻るのは嫌だと手足をバタバタもがく。
水槽の中には天敵もおらず、勝手気ままな生活ができるというのに、何が不満か。
一度、銭亀を入れたバケツがひっくり返してしまった。
ひっくり返った途端に、F1かチョロキュー並のスピードで逃亡した。
水槽から出た銭亀がどういう行動するか暫くそのままにしてみていた。
フローリング床に置いてあるヘルスメーターやゴミ箱やテレビ台の裏側だの、部屋にある物は何でも匂いを嗅ぎ廻っては、移動していく。
その様子は、部屋を探検しているようだ。
これから生活する場のそれぞれの位置を覚えようとしているかのようだ。
亀はちっこくまん丸眼の視力も相当なものだが、鼻もよく効くようだ。
音にも敏感だ。
人の近づく音がすると、フッと顔の方向を変え、反対方向に逃げる。
人と鬼ごっこでもしているつもりだろうか。
甲羅の黒い銭亀は目を離した隙に雲隠れすると厄介だ。
ただ、ほったらかしにしていても、しばらくすると直ぐ居所が判る。
甲羅が床板に当たり、歩くたびにこつんこつん音がしている。
この時以来、水替えする時には床の上でのびのびと遊ばすことにした。
いつも同じパターンで動いているように思える。
眠い場合は、光が届かない物陰などに入り込むが、ビニールや紙袋でも置いてあると、がさごそ音がするので、長時間行方不明ということはない。
そのうち水替え時以外でも水槽から出すようになったのは当然のなりゆきかも知れない。
僕は義理人情に弱い人間なもんで、ついつい水槽から出してやる事が多くなった。
一度なぞ水槽から居間に出しっぱなしで忘れて出掛けてしまった時は、玄関の扉を開けた途端、玄関まで走って迎えに出てきた。
いや〜、うれしかったですね。
新婚時代の妻みたい。(冗談だけど)
妻も娘も外出から帰ると先ずは、銭亀の部屋の前に見に行く。
水槽の中にいないと大騒ぎだ。
「タカラちゃん!どこにいるの、出ておいで!」
呼べば応える亀の歩く音!
こつんこつんの音が聞こえてくる。
腹減った!「カメのエサ」を見つめる「たからちゃん」
ヒータのコードに挟まるのが好き?いいえ逃げ出したいだけなのです
石の上に乗れば逃げ出せるかな?と首を精一杯伸ばしてよじ登る!
くたびれた〜、ヒーターを枕に一休み
甲羅が10センチほどに成長してから、住み処は衣装ケースに格上げ。
水替えは大変ですが、泳ぎがとても上手になりました。
エサは、陽の当たる窓際に置いた植木鉢の皿の中で与えます。
食後の甲羅干しが大好きです。
人の手足と遊ぶのが大好きです。
我が家のペットになって5年。大人になると甲羅の色が黒く変化します。
|